空が変にゆがんだかと思うと、裂け目ができて二人は落ちてきた。スロッドは運良く森に落ち、体をひどく打ちつけてしまったが、朦朧とした意識の中何とか生きている。
「こっちだ!いたぞ!」
誰かがこっちに走ってくる。しかし、スロッドには逃げる力さえ残っていなく、とうとう意識を失った。
気づいた時には、先ほどの枯葉の柔らかな感覚ではなく、鉄板の冷たく固い感覚を背中に感じた。木に打ちつけた腰をさすりながら起きあがると、あの時の城内と同じ、薬品の匂いがしている。
「なんでまた女なんて連れてきたんですか、あんな…」
不意に部屋の外から声がしたかと思うと、男が二人入ってきた。
「でっ、でも見たんです、空がゆがんで彼女ともう一人、落ちてくるのを。きっと時空を越える能力を持っているんでしょう!また孤児院に入れればいいじゃないですか」
「それは、興味深いですね…それならまあ…でも大人じゃないですか、…ああ起きましたか」
透き通った空色の髪の男は、スロッドを一瞥もせずに、スロッドにつながれたコンピュータの統計を見た。
「…別に変わった能力はなさそうですが」「そんな…」
男は統計から目を離さずにスロッドに近寄ってきた。
「貴方、空から降ってきたのは本当ですか」
スロッドはちょっと戸惑ったが、ええ、と返事をして、「ここは何処ですの、あなた達は…」
男は大きくため息をついて、これだから女は…とつぶやき、部屋を出ようとした。
「ちょっ、ちょっとウィルさん…!」
「一刻も早く彼女をここから出してください。ただの女です。院に入れる必要もない」
そういって、結局ウィルという男は部屋を出て、残された男は困ったようにスロッドを見た。
「あー…ということでこっちへ…」といいながらスロッドにつけられた機器をはずしはじめた。
「ねえ、ここは何処かしら」
「ただの研究施設ですよ、…ねえあなたは本当になんの能力も無いのですか?…おかしいですね、確かに空から降ってきたでしょう?あれはなんだったのです?」
「あれは…」 はずれた機器を眺めながら、なんでもない、と答えた。
「わたくしはただの女ですわ。…ここは何の研究をしているのです?」
「知らない方がいいですがね」
そういいながら男はこっちを見るとにやっと笑って、近くにあったヒトの目玉のホルマリン漬けを指ではじいた。生物学、とスロッドは呟くと、男は楽しいですよと笑った。
「まだいたのですか、早くここから出ていってください」
多くの資料をかかえて、ウィル(と呼ばれる男)は部屋に入ってくると、スロッドを睨んだ。
「研究、楽しそうですね、わたくしも入れてもらえないのかしら。昔わたくしも研究員をしていましたわ、役に立つと思いますけど?」
無理ですね、ウィルは即答した。「貴方には無理です」そう言い捨てて別の資料をつかんで部屋を出ていった。
男は申し訳なさそうにスロッドを見て、耳打ちした。
「ウィルさんは、女が嫌いです」
とある研究施設にて(ラケ×almaさん)