久しぶりに研究室から出てきた。太陽の光はこんなに辛かったのかしら。
「姉さん、どこに?」「先輩の所へ、リオンとじゅうを任せますわ」
庭に出てきてもろくな事はない、あのおかっぱが物凄い剣幕で睨んでくる。わたくしはそんなもの相手にしないでまっすぐ蜘蛛の仔に近づいて、「今度、研究室に遊びにいらっしゃい」とだけ伝えて屋敷を出た。
重たい資料をかかえ、先輩の所へいくのも辛いもの。わたくしの事を知っている人はわたくしを避け、そうでない人はなれなれしく話しかけてくる。冷ややかな目線や耳元で聞こえる声を知らないふりをしているうちに、先輩の所へついた。
「先輩」「ああ、あなたですか、久しいですね」
仕事の休み時間なのか、薄暗い階段の下に彼はいた。
「今少しお時間あります?じゅうの研究が進んだんですが、相談がありますわ」
「ほう、あのネオピグミーですね?たしか脳の研究材料でしたね」そういって、渡された資料に目を通して彼は少しうなった。
「…資料の数の割には内容が薄いですね、このくらいなら10ページくらいのレポートにしかならないですよ」
「そうですか…」「…ああ、もう時間が少なくなってきました、もういいですか?」彼は資料を返し、歩きはじめた。
わたくしは急いで彼を追って、チョコのトリュフの包みを渡した。
「別に、強いて理由はありませんわいつものお礼ですの」
彼が女性を毛嫌いしているのは知っているし、もしかしたらわたくしの事も嫌いかもしれないけれど。
「私はあなたを世話しているつもりはないですが…毎年(いつも)くれますね」
今年もデパートの安売りですか?と言いながらその中の一つをつまんだ。わたくしはちょっとだけ微笑んで、首を振る。
「今年は手作りですの」
「めずらしいですね」と一つ食べて、悪くないですと言った。
「よかったですわ、疲労のとれる毒薬の苦みを消すのには苦労しましたから」と言うと彼は少し固まってから、苦笑いする。
「ったく、あなたの研究は…」「大発明ですわ、毒が体にいいなんて」
先輩はため息をついて、どこかへ行った。
「来月、何かいいおかえしをしましょう」そのお返しはハンカチなのか、それとも毒入りマシュマロでしょうか。
毒入りトリュフ (スロッド×almaさん宅ウィル君)